リヤカーで行商からはじめた創業社長の判断
私の勤務していた通信販売会社で創業社長の考えに非常に感動したお話しです。
その創業社長は一代で会社を上場企業にした方です。
商売のはじまりは反物をリヤカーに積んで行商(商品を持って民家を一軒一軒訪問して商品を販売すること)したことからはじめたとのことです。
本当に大変な思いをされたようですが、その経験から商品を1つ買っていただけることの重さ尊さを感じられたとのことです。
近江商人の子育てを描いた「てんびんの詩」という物語があります。
下記でストーリーも記載されています。ダイジェスト版ですが、動画も見れます。
簡単に説明させていただくと
近江商人の子供が小学校を卒業して、親から卒業祝に贈られたのが「鍋蓋」で、その鍋蓋を売らなければ後継ぎになれないと言われ、知り合いに売りに行っても買ってもらえず悩んでいたときに、たまたま洗い場に他人の鍋と鍋蓋が置いてあり、「その鍋蓋がなくなってしまったら買ってくれるかも?」と思ったが、その鍋蓋は「誰かが大変な思いして売ったものかもしれない」と思い気がついたら鍋蓋を必死に洗っていた。
それを見ていた女の人に声をかけられ、正直に「自分は鍋蓋がなくなれば買ってくれるかもと考えて悪いことをしようとしていた」と涙ながらに詫びたところ、その人が鍋蓋を買ってくれたというお話しです。
この物語で、
「正直に話すこと」「他人の役に立とうと思うこと」が商売の原点と教わりました。
この物語のビデオが会社に保管されていたので家に持って帰り、見たのですが本当に感動しました。
この考えが、創業社長の原点にあるとのことでした。
今でも会社の業績が下がったときや自分で起業を考えるときに、この「てんびんの詩」を思い出して、商売の原点ができているかと考えるようになりました。
この通販会社は通販ブームもあり6年連続で30%成長し、その途上で私も入社したのですが、このような急激な成長は続きはせず、翌年には約100億円の赤字となりました。
この赤字の年に私の担当していた部署のコールセンターは電話も一気に少なくなりました。全国に12拠点でオペレーターが3000人は在籍していました。
そして、自社でコールセンターを運営するよりも、アウトソーシング(外部委託)した方がコスト削減になるという試算も出きて、会社に提案されたのです。
この100億の赤字は会社に大きなダメージだったのですが、
この創業社長の判断は
「いくら通信販売でも、どのような商売であっても、お客様と企業をつなぐのは自社の人間でなければいけない。
それが商売の原点だからどれだけコストが安価でも外部委託はしない」
というものでした。
本当に感動しました。
会議の席で、ほんの少ししか話したことのない創業社長でしたが会社を上場までさせた人でも、お客様の接点に信念を持っていてくれたことが本当に嬉しく感動しました。
自社のコールセンターでできることは他にももっとあるはず、とにかく赤字を吹っ飛ばすほどがんばろうとこの話を聞いて心に誓いました。
そして、会社はその後、業績は回復していきました。
時代が進化してもこのような商売の原点は、どれだけ世の中が変わろうがこだわるべきことなのではないかと感じます。
私はこの教えで、商売というのはやはりお客様の心に響くことではないといけないのだと思います。
「正直に伝えること」
「きちんと向き合うこと」
「他人やお客様の立場に本当に立てる心」
これが大切なのだと確信しています。
自分だけ自分の会社だけが良ければよいという考えの強い経営者が多くなっていますが、このような商売の原点に気づいてほしいと心から願ってます。