知的障害者の仕事を支える福祉施設との出会い
私が東京の拠点を担当していた15年程前の知的障害者の人たちが作っているパン屋さんとの出会いのお話しです。
会社がCSR活動を強化することの方針が出されました。CSRとは企業の社会的責任というもので企業が自ら社会貢献をする活動のことです。
そこで、本社では障害者の方を採用して、社内向けのサービスを運営したりしていました。また、通販会社だったので、視覚障害者を支える社会福祉法人と一緒になって、音声だけのカタログを発行してみたりしていました。この音声カタログは担当部署の社員が何時間も洋服の説明やサイズ、色を録音したCDでした。
「私も自分の拠点でもできることはないか?」と考え、地元出身者に相談したりしていました。すると通勤途中の福祉施設の路上でじゃがいもやたまねぎなどの野菜販売をしていると聞き、早速、訪問してみました。
知的障害者の方が運ばれてきたじゃがいもやたまねぎを袋詰めにする作業をここで行っていて、それを路上で販売されているとのことでした。
歩いて5分程の距離だったので、「私の勤務する拠点に販売に来てもらえないか」とお願いをしてみたのですが、「過去にそのような企業に訪問することも経験あるのですが結局、販売数は最初は多いのですが、何度も訪問すると減ってしまう、販売単価も安いので難しいかも」とのことでした。従業員は主婦が120名程で全員で170名はいましたのでとお話するとテスト的に週1回だけやってみることになりました。
社内でその告知をするとみんな協力してくれるとのことで販売を開始しました。
初回は100袋ほど販売できて、福祉施設の方も喜んでいただきましたが、翌週は50袋ほどとなり、それ以降はゆっくりと下がり毎回10袋~15袋程度になりました。
私もがっかりしましたが、従業員も買ってあげたいけど家庭でじゃがいもとたまねぎは1週間で、1袋も使わないとのことで、施設の方もやはり難しいですね。とのことで、残念ながら継続できなくなりました。他の施設でパン販売をやっているところもありますよと他を紹介される結果となりました。
このときに私たち利用者側に「やってあげてる、買ってあげてる、会社の活動でやってみただけだから」との気持ちだけでやろうとするから、うまくいかないのでは、寄り添う気持ちも足りなかったのではと反省することになりました。
それから、この件には懲りずに、紹介いただいたパンの販売をしている福祉施設の方にも連絡してみました。この施設は障害のある方に日光金谷ホテルのパン生地を使って製造しているとのことで出張販売もしているとのことでした。
そして、販売も知的障害のある方も直接来てくれるとのことでしたが、野菜販売で継続できなかったこともお話ししてもそれでも良いとのことで来ていただくことになりました。
夕方の時間は13:00~21:00勤務者の遅いランチ休憩時間と重なったので、ちょっと期待
が持てましたが、飽きるのではないかと継続が不安でした。
そして、販売がスタートしました。このパン屋さんのパンはホテルの生地を使用していたので、本当においしいものばかりでした。初日から100個近く販売できたようでした。毎回、知的障害者の方が会計をしてくれるのですが、急に大きな声で「ありがとうございました!」と言われたりするので驚いたりしてしまいますが、従業員のみんなにも好評でした。
そして、これまでと同じように週を重ねるごとに残念ながら販売数は下がっていきました。日に20個も販売できない日もあり、車でわざわざ来ていただいて申し訳ない思いになりました。
そして、販売に来られていたときにお話ししないとと思い「この販売数ではやはり継続は難しいと思いますので、そちら側のご判断で止めていただいても大丈夫ですよ」とお話ししました。すると、施設の方からこのような言葉をいただきました。
「私たちのパン販売の本当の目的は売上とか採算をとることではないんです。今日も来ている知的障害の子達と健常者の方がふれあうことで健常者の方にふれあうことを慣れてほしいのです。電車の中で大声を出してしまっても決して他人を傷つけることはしないので変な目で見ないでほしいのです。だから、このように少しでも触れ合って理解しあることが大切なので売上とかは心配しないでください」
私はその言葉で本当に感動しました。
このように福祉の世界でがんばっているからこそ健常者の目に心を痛めていらっしゃるのだとはじめて気づかされました。考えたこともありませんでした。それと同時に私自身も障害のある方を斜めに見ていたこともあったことをすごく悔やみ、反省させられました。自分は人間としてこの目の前の施設の方の足元にも及ばないまだまだ未熟者だと痛感いたしました。自分ももっともっと人の痛みや思いが理解できる人間にならなければと心から思いました。
その後も障害のある方の中でも特に知的障害のある方のできる仕事が少ないのが一番の課題とお聞きして社内でできることを検討したりもしました。
この後も販売は継続してやっていただけました。
そのうち従業員の中でも障害者の方に「今日もきてくれたの〇〇ちゃん!」と話しかけてくれたりするようにもなり、本当の社会貢献とはこのようなことなのだろうと大きな気づきを与えていただきました。
私はこの日以降から知的障害者の方を電車や道で出会っても、自然に温かい目で見るようになりました。このような雰囲気を作ってあげることが大切なのだともお聞きし今でも続けています。本当に素晴らしい経験でした。
私の担当していた拠点はもう閉鎖してしまったのですが、調べてみたところこのパン屋さんはいまだに運営されていました。嬉しいです。
販売している場所や喫茶店も運営しているそうなので、機会があればぜひ食べてみてください。
それから、このような障害のある方などの専門の転職サポートの会社もあるんです。
私も知って驚きました。素晴らしいサービスだと思います。
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