転職先でインパクトのある凄い上司との出会い
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私がこれまで巡り会った中で、本当にインパクトの強い上司に助けられたお話しです。
過去に在籍していた通信販売の上場企業で全国に拠点がいくつもあり、私はその中の地方拠点に中途入社したのですが、この拠点には通販受注を受け付ける受注センターと問合せやクレームを受け付ける問合せセンターの2部署がありました。
この2部署は犬猿の仲でそれぞれが互いに嫌っていることをすぐに理解できました。
理由は簡単なのですが、受注センターが間違って注文を受け付けるとそのクレームが問合せセンターに入ります。
ミスもいろいろで、商品申し込みミスからはじまり、商品届け先ミス、受注時の案内ミスやお客様の勘違いなどもあり、本当に多岐に渡ります。
問合せセンターはこの受注後の対応をするため、受注センターに対して「こんなミスばかりするのか?」と苛立ちを持つのです。
その積み重ねが自然に犬猿の仲になっていくのです。
全国に受注センターと問合せセンターが併設されている拠点は全てこのような犬猿の仲でした。
私は受注センターで入社して、すぐにこの状況を察していたのですが、このような互いの感情に私は関係ないと考えて、普通に接するよう心がけていました。
すると3ケ月後には私が受注センターから問合せセンターへの人事異動になりました。
それと同時に問合せセンターの社員が1名受注センターに異動になりました。
トレードのような人事です。
「なぜ、入社3ケ月の人間を異動させるのか?」
と不思議に思ったのですが、会社の指示なので当然従いました。
後でわかったのですが、問合せセンターのセンター長からの依頼でこのようになったそうです。私は評価をしていただいていたようです。
そして、真っ先になかなか解決しないクレーム対応をさせられました。私の度胸や交渉力・クレーム解決力を試してみたかったようで、これもすぐに合格だったようです。
異動してすぐにこのようなクレーム対応をさせることには驚きましたが、センター長の指示だったようです。しかし、自分でも十分にやっていけることを実感しました。
そして、先ほどの受注センターと問合せセンターの両方に在籍したのは自分だけなので『自分がこの不仲をどうにかできないか?』『自分の役割かも?』と思い始めました。
問合せセンターの同僚の社員に相談をしてみたのですが、それをセンター長が聞いたら怒ると思うので言わないほうがよいとのことでした。
そもそもこの不仲はそれぞれの長の2人が犬猿の仲だから、部下の私たちもそれに従っているだけとのことでした。
この件は静観してたところ、体制変更の話しが本社からきました。
それは、
『受注センターと問合せセンターを統合して、受注も問合せも対応する統合センターにするとのことでした』
本社の担当役員が
『お客様に受注センター、問合せセンターと電話をかける先を指示するのではなく、1つの電話番号で受注も問合せも対応できるようにして顧客対応品質を上げたい!』
との理由でした。
また、『これまでの受注センターと問合せセンターの不仲も解消したい』と明言されました。
この話しを聞いた同僚の困惑は理解できたのですが、私は心底共感できました。
一つの会社なのに犬猿な仲をしてるよりもお客様のための仕事をしようよと思っていたので、これを進めていくことに自分が率先して動くことが両方のためになると思い精力的に動きはじめました。
そして、統合した拠点のトップは問合せセンターの長がなることになりました。
当然、もっとも不安なのは受注センターの社員やアルバイトです。
私はその人たちの不安な思いを最初は聞いてあげていたのですが、進めていくことが優先で、「問合せセンターのクレームは確かにあるけど、大丈夫だからがんばりましょう!」とだけ言うようになっていたのです。
不安な受注センターの人達からは、私が問合せセンターに異動してから私が冷たくなったと思われていることも理解していましたが、統合を進めることが優先で配慮が足りなかったのだと後から思いました。
残念ながら、この統合を進める途中で退職した社員やアルバイトも出てしまいました。
そして、統合の体制も整い新体制がスタートしました。
そして、数日後に自宅に帰ると留守番電話に聞いたことのない声で
「なんであんなことをするのか!会社を辞めた人もいる!あなたなんかこの町から出ていけ!」というメッセージが入っていました。そして、話している後ろで社名を言っている声が聞こえました。
私の統合に対する動きに不満を募らせこのような行動に出たのだと思います。
ここまで行動をされることに私は恐怖を感じました。
そして、その翌日にセンター長に留守電のことを相談しました。
すると誰の声かわかる可能性があるからその音声を持ってくるよう指示されました。
そして、翌日にその音声を持参しました。
誰がこのようなことをやったかはおおよそ想定ができはじめました。受注センターで私のことを親しく思ってくれていたアルバイトのメンバーです。
しかし、確証はとれません。
そして、センター長が「この件は私に任せてほしい」とのことでした。
するとその翌日の朝礼で、
「社員の自宅に嫌がらせの留守電が入っていて、このような嫌がらせをする人がいる、今から全員に聞いてもらいます。これを聞いてどのように思うか考えてほしい!」
そして、この留守電の音声を全員の前で流したのです。
本当にとんでもないことをする人だと驚きました。
せめて、私に事前に言ってほしかったのですが、何よりもこの後に自分は従業員みんなからどのように思われるのだろうと私自身も不安でした。
しかし、その後何もなく、これで全てが解決しました。
再度、留守電が入ることはありませんでした。
これまで統合を不満を口にしていた従業員もこの件以降、言わなくなりました。
全従業員がこれをきっかけに統合に対して、覚悟を決めるきっかけになりました。
このセンター長の対応は過激に感じましたが、全てこれをきっかけに留守電の入らないようにすることと不満を持っている従業員に覚悟を持ってもらうことになると想定して行ったことだったとのことでした。
これが本当の人材マネジメントであり、人を動かす人なのだと思いました。
私もこのようなことを考えれるようにならなければと感じました。
また、このセンター長から言われたことなのですが、
「人の上に立って仕事をするということは今回のように一時的に恨まれたりすることもある。親しい人ほど想定外の行動をとることがある。だから、むやみに個人の電話番号を教えない方がよい、今回も電話番号を知らなかったら嫌がらせの留守電も出来なかったはず、それが自分を守るだけではなく、下の人間を守ることにもつながる」
本当に心から納得しました。
人の上に立つにはもっともっと真剣に神聖に深く考えるべきことがあることを実感しました。
素晴らしい出会いでした。